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通路をプロシュートが前、ルイズが後ろを歩く。 だがプロシュートの後ろ姿から ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ というような音と何かオーラが見える。 「……何?まだ怒ってるの?」 プロシュートがルイズに向き直る。 「いいかッ!オレが怒ってんのはなテメーの『成長の無さ』なんだルイズ! そりゃあ確かに毎回『爆発』起こしてんだ、『ゼロ』と呼ばれて当然だッ! 自分まで『巻き込まれちまってる』んだからな!オレだってヤバかった!」 己の使い魔に一番痛いところを突かれた。 「毎回失敗する理由はオレなんかには分からねぇ! だが!オメー自身の心が『成長』しなけりゃあまた『ゼロ』と言われるだけだッ!」 プロシュートの言っている事はルイズにも十分分かる、だが今まで散々努力はしてきた。 知識だけならそこら辺のメイジ達よりも上だという自負もある、だが魔法は使えない。故に『ゼロのルイズ』と呼ばれる。 これ以上できる事が他に何があろうか。したがって次に出てきた言葉は 「……使い魔がご主人様にお説教しようなって100年早いのよ!今日のご飯無しだからね!」 ルイズが駆け出し通路の曲がり角を曲がり居なくなる。 「オイ!まだ話は終わっちゃいねーぞ!……チッ、ペッシのよーにはいかねーか」 昼食を抜かれたとしてもプロシュートには朝の男からギッた金があるので特に問題はない。 だが、一つ肝心な事を忘れていた。 「ヤバイな……迷ったか?これは」 流石の兄貴も慣れない場所では迷うらしい。 10分程通路を歩いたが全く道が分からず、さすがにイラついてきた。 (ギアッチョならあたり構わずブチのめしてるとこだな) チームである意味ペッシ以上に手のかかる仲間の事を少し思い出す。 ちなみにこの前はニュースにイラついて溜まり場のテレビをブッ壊しリゾットにカミソリを精製されかけていた。 自慢の氷の防御もリゾットの磁力にだけは効かないらしい。 「あ、あの……どうかなさいましたか?」 と、まぁ明らかにカタギの人間じゃあないプロシュートに若干恐れの入った声がかかる。 自分が居た場所、もとい世界では特定の地域を除いてでしか見ることのできないメイド服を着た少女がそこに居た。 「……ああ、食堂に行きてぇんだが生憎道が分からなくてな」 「それでしたら、私も行く途中なのでご案内します」 「助かる」 食堂に向かい歩くメイドと非カタギ、通常であれば明らかに異常な光景である。 途中気付いたのか 「あなたがミス・ヴァリエールの使い魔になった平民の方ですか?」 「まぁ訳の分からねーうちにそういう事になっちまったようだがな。オメーもメイジとかいうやつか?」 「いえ、私も平民です。ここには奉公のために貴族を世話しに来ているんです」 (あのマンモーニ連中の世話か…リゾット以上に苦労してそうだな) 「私はシエスタと申します。よければお名前を教えて頂いてもよろしいでしょうか?」 「プロシュート、意味はオレの国の言葉で『生ハム』だ」 「プロシュートさん…ですね、食堂に着きましたよ」 「グラッツェ」 そう礼を述べプロシュートが中に入ろうとするがシエスタが 「あの、賄い物でよろしければ食べていかれませんか?」 と聞いてくる。 それは使い魔として召喚されたプロシュートを気遣ったものだが、今まで裏街道を歩いてきたプロシュートにとってほぼ初めてとも言ってもいいものだ。 「いや、一応金はあるからな。そこまで世話になるわけにはいかねぇさ」 「そうですか…残念です」 「何かあれば遠慮なく世話にならせてもらうぜ」 プロシュートが微笑を浮かべシエスタにそう返す。 チームの連中(特にメローネ)に見られた日には自殺もんだが、幸いヤツらはここには居ない。 その超レアとも言える兄貴の微笑を見てシエスタも微笑み返す。 「外の方にもお席はありますので」 「そうさせて貰おう」 『魔法学院アルヴィーズ食堂』 本来なら生徒達が食事や談笑する場所であるが、ある一角だけ全く人が座っていなかった。 当然プロシュートが食事をしている周辺である。 注文したのはピッツァとワイン。 細かい味付けは違うがやはりイタリア人としてはこれが一番よく馴染む。 声が小さすぎて聞き取れないが多分『平民』『平民』と言ってるのだろうと思う。 ギャングという事からイタリアに居た時もこのような視線は結構浴びており慣れていたはずだが、どうも不快感を感じるが何故かはまだ分からない。 ピッツァを食べ終わりワインの香りを味わいながら飲んでいるとメイドがデザートを運んでいるのが見えた。シエスタである。 プロシュートに気付いたのか笑みをこちらに向ける ―が、視線が反れたのか金髪の男と正面から衝突し、その勢いでデザートが重力を脱し男の服に直撃を果たす。 その男にプロシュートは見覚えがあった。このピッツァとワインの代金を提供して貰ったヤツだ。 貴族どうしなら大して騒ぎにならない事だがこの場合は違う。貴族とその奉仕に来ているメイド、明らかにシエスタの分が悪い。 当然ながら男がシエスタに対し騒ぎ立てる。 「君…平民が貴族に…『青銅のギーシュ』に何て事をしてくれたんだ!これから大切な用があるというのにどうしてくれる!」 「も、もももも申しわけございません!」 シエスタが男に向かって半泣きになりそうになりながら今にも土下座に発展リーチしかねんばかりに頭を下げている。 とりあえず、おさまったのかギーシュが後ろを向く。 「申し訳ありません…ぶつかってしまった時これを落とされたようですが…」 が、頭を下げている時シエスタがギーシュの足元に落ちている小瓶に気付きそれを拾い上げる。 瞬間、ギーシュが凄まじい勢いでそれを否定する。 「こ、これは僕のじゃない、き、君は一体何を言ってるんだ!」 「ですが、確かにギーシュ様の足元に…」 さらに否定しようとするギーシュ、だが周りがそれを肯定する。何時の時代も最大の敵は強敵(とも)という事か。 「ん…?この小瓶はモンモランシーの香水じゃあないか」 「そうか…ギーシュは今モンモランシーと…そういう事か」 こうなってくるとギーシュにはもう収拾する術はない。 そうこうしてると今朝食堂前でギーシュと一緒に居た少女がその集団に泣きながら向かいそして―― グワシィィーz_ィン 少女のビンタが炸裂した。 それを見たプロシュートが (メローネが見たら『スゴク良い!良いビンタだ!手首の(ry』と言うだろうな) と思った程の勢いだ。 そしてビンタを決めた少女が泣きながら走り去った後、新たな少女がギーシュに詰め寄ってきた。 「これは、どういう事かしらギーシュ…!!」 「モ、モンモランシー!違う、違うんだ!あの子はだだの…」 そうギーシュが言い終わる前にモンモランシーと呼ばれた少女がシエスタが持っている香水を取りそれをギーシュにブチ撒ける。 「もう二度とその顔を見せないで…!」 少女二人に捨てられたギーシュ、二股をかけていた当人が当然悪いのだが理不尽な怒りはシエスタに向かっていった。 「君が軽率に香水のビンなんか拾い上げたおかげで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね!」 シエスタはただ頭を下げ続け謝るばかりだったが他の生徒達の前でビンタと香水を頭からブチ撒けられたという恥からさらに怒りがヒートアップする。 「申し訳ありませんで済めば憲兵なんていらないんだよ!……どうやら君には貴族に無礼を働くとどうなるかを身を以って知った方がいいようだね」 ギーシュが薔薇の造花の杖を出し構える。 メイジが杖を出す時。それは魔法を使う時だとシエスタは十二分に知っていた。つまりこれから自分が何をされるかという事も。 「ひっ……!」 シエスタがうずくまり頭を両手で押さえる。 この騒ぎにギャラリーが出来ていたようだが、誰もギーシュを止めようとしたりシエスタを助けようとはしない。 むしろニヤニヤとした笑みを浮かべ見物している物が多数を占めている。 それを見た時プロシュートが感じた不快感が何か理解した。 あの目だ…あの目と同じだった。 組織の他のチームの幹部連中が自分達暗殺チームを見る目。 利用するだけ利用し、得る物はボスからの不当ともいえる報酬のみ。 他のチームがそれぞれのシマを持ち利益を得ているというのに自分達にはそれがない。 その圧倒的とも言える他のチームとの待遇の差による自分達を見下した目……それと同じだった。 そう思った瞬間プロシュートは行動していた。 頭をかばうようにして縮こまるシエスタは圧倒的な恐怖から泣いていた。 少しだけ視線を上げ上を見る、ギーシュが杖を振り上げていたのを見て少しでも恐怖から遠ざかろうと目を閉じた。 だが、いくら時間が経っても自分が恐れていたものは襲ってこない。あるいはもう襲ってきてしまったのかと思いつつ恐る恐る目を開ける。 「ミス・ヴァリエールが召喚した使い魔君じゃないか…邪魔しないでくれたまえ!」 平民が貴族にあのような無礼を働いたんだ。貴族の使い魔の君がそれが分からないのかい?」 逆行で顔はよく見えなかったが男が振り上げられたギーシュの腕を掴んでいた。 「それとも、平民同士助け合おうってことかい?涙ぐましい友情だね」 「二股かけてたのがバレで無抵抗のヤツに八つ当たりか?マンモーニを通り越してゲス野郎だなオメーは」 ゲス野郎という言葉に完全プッツン来たようである。 「……いいだろう!まずは君から礼儀というものを教えてあげた方がいいようだねッ!」 「何がやりてぇのか言ってみなゲス野郎」 「まだ言うか…!『決闘』だッ!ヴェストリ広場で待っている!準備ができたら何時でも来たまえ!」 そういい残しギーシュが友人とギャラリーを引き連れ広場の方向へ向かっていった。 「あ、ありがとうございます…でも元々関係ない貴方に迷惑はかけられません…私が行って何とか事を沈めてきます…」 「ヤツが決闘したがってるのはオレだ、オメーじゃあねぇ。それに何の問題も無ねぇ」 「で、でも…このままじゃ貴方の命が…」 「ここで万が一オレが死ぬとしてもオレは常にそういう『覚悟』をしてきている」 そう言うと、プロシュートは自分が座っていた席に戻り最後の残ったワインを飲むと広場にと向かっていった。 ←To be continued 戻る< 目次 続く
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ギーシュは目の前に立つ男に恐怖していた。 (この男は平民だ。それどころか杖を持っていない。 魔法を使えるはずがないッ! しかし、こいつは身を隠したと思うと左腕だけが亀から出てきて攻撃した。 何をやったのかサッパリ分からない! しかも「全力で来い」だって!? こいつは僕を、いやメイジそのものを全く恐れていない! いや、そうじゃない。こいつは『戦って死ぬ事』自体を恐れていない! 何故だ!?何故平民がそんな風に考えれるんだ!?) 「君は…一体何者なんだい…?」 ギーシュは右腕の痛みを堪えつつ尋ねた。 「俺はそこのルイズとか言う小娘の使い魔とやらだが?」 「そうじゃない。君は使い魔である以前に、何者なんだと聞いたんだ。」 「…良い眼になったな。 よし、いいだろう。教えてやる。俺は平民で…」 ポルナレフはエジプトで死んだ親友達を思い出しつつ静かに言った。 「…悲しい友情運を持つ男だ…」 ギーシュに向けた眼に先程の怒りは無かった。 あったのは貴族の屋敷で暮らして来たギーシュやギャラリーのほとんどにとって、見たことが無いほど悲しい光だった。 「…悲しい…友情運?」 「そうだ…」 辺りに何か辛い空気が流れた。 誰もポルナレフの過去に何があったのか知らなかったが、悲しみだけは伝わって来たのだ。 「…さて、小僧。いい加減決闘の続き、と行こうか。」 ポルナレフはナイフを逆手に構えた。 「ああ、いいだろう。」 ギーシュが薔薇を振ると新たに六体のワルキューレが現れ、計七体となった。 「それが貴様の限界か?」 「ああ、僕のワルキューレは同時に七体までだ。」 この時、ギーシュは男に勝つには複数でやるしかない、と考えた。 (それに全力で行かないと後が怖かった) 「行け!ワルキューレッ!!」 号令と共に一体を残し六体のワルキューレが突進をしだした! 一方のポルナレフにはナイフ一本しかない。 亀のトリックはもう使えないことは明白である。 ポルナレフはナイフをより強く握りしめた。 「来い…!」 その時、左手のルーンが輝き出した。 ポルナレフは体が軽くなった気がした。 まるで、チャリオッツの装甲を外した時の様だった。 これならイケるかもしれない。思わずそう思ってしまった …が当然ナイフだけでは多勢に無勢だった。 現実は非情である。 ポルナレフは二体の肘から先を切り落としたが、 あっという間に囲まれると、殴られては蹴られ、蹴られては殴られた。 「所詮カッコつけてもやっぱり平民は平民か。」 「メイジには勝ち目ないよな、そりゃ。」 周りから失望に似た声がし始めた。 「オラァッ!」 ギーシュの掛け声と共にポルナレフはワルキューレの渾身のストレートを腹にモロにくらい、吹っ飛んだ。 ゴシャァァアァァッ! ポルナレフは地面にたたき付けられた。 誰もがやれやれ、やっと終わった、と思った。 その中でルイズは自分の使い魔が一方的にやられる姿を我慢できなかった。 闘いを止めようと急いで間に入ろうとしたが、 「ミス・ヴァリエール。決闘の邪魔をしないでくれたまえ。」 ギーシュが杖を向けた。 「どう見たってもうあんたの勝ちじゃないッ!大体平民がメイジに…」 ギーシュはやれやれと呟いた。 「君は自分の使い魔の台詞を聞かなかったのかい?これは決闘だ。 侮辱なんてあってはならないんだよ。」 でも…とルイズが言ったその時だった。 「小僧の言う通りだ、小娘。手を引け。まだ決着はついてはいない…」 土煙の中からポルナレフの声がした。 しかし、同時にゴフッ!と血を吐いた音がした。 「あんた…何で…?何の為に闘うの?勝ち目なんて無いのに…」 ルイズはその音を聞き、涙を流しそうになりながら呟いた。 またゴフッ!と血を吐いた後、ポルナレフは誰に対してでもなく、独り言のように語り出した。 「俺はまだ、死んではいない。死んではいけない。そして死ぬことは出来ない…。それだけの理由がある…」 「?」 「俺は…死んだ。『二度』…な。そしてここに来て『一度』蘇った…。」 「何を言っているんだ!?」 ギーシュはポルナレフの言葉の意味が全く分からなかった。 「しかしもう『一度』蘇ることは出来なかった。何故か?『運命』がそれを望んだからだ。我々は『運命の奴隷』だからな…運命には従わざるをえない…」 土煙の中からポルナレフが出てきた。 その眼はしっかりとギーシュを見ている。 左手には先程のナイフが、右手には… 「だが、君のお陰で私は『運命』に選ばれる事が出来た。」 ボロボロの石の鏃ような物がその掌を貫いていた。 そして背後には、誰にも見えない、『白銀の戦車』の名を持つ『騎士』がポルナレフを護るように立っていた。 To Be Continued...
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「武装錬金」より、「武藤カズキ」を召喚。 第零話 長いお別れ 第一話 新しい世界 第二話 イントロダクト・サーヴァント 第三話 ゼロのルイズ 第四話 使い魔カズキ 第五話 VS.ギーシュ 第六話 カウントダウン 第七話 王都トリスタニア 第八話 土くれのフーケ 第九話 破壊の聖石 第十話 掌握、決意、そして咆哮 上 下 第十一話 三本腕の悪魔 第十二話 ゼロの使い魔 第十三話 KNOCK KNOCK ... 第十四話 王女の依頼
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「ってな事があったんだよー、どうすればいいと思う?」 「うーん、謝るしかないんじゃあないですか?」 おれは昼食を取りながら授業中の事をどう誤魔化そうか考えていた。 あの後ルイズはオスマンに呼び出されたらしい。それはつまり相当ヤバイ事をしでかした、という事だ。 おれとしては今この学院を離れるのは惜しい。ここなら部下も集められるし、ルイズを通して国の動きもわかるからな。 だから謝ろうと思った。 方法としては砂人形で何とかなりそうではあるのだが、ワンパターンすぎるのが問題だ。 後の事を考えると他の方法も持っておいた方が良い。 だがあの怒りはちょっとやそっとでおさまりはしないだろう。 考えても分からない。 だから人に聞いてみた。具体的に言うとシエスタに。 「悪い事をしたのなら謝らなくちゃ駄目ですよ」 「うん」 「ちゃんと悪い事をしたという意識を持つんですよ」 「ああ」 「イギーさんはその辺を適当にしそうですけど、それじゃ駄目ですからね」 「うい~す」 誠意を持って謝る以外の方法を知らなさそうなので適当に返事してこの場を去る事にする。 「参考になったよ、ありがとー」 「どういたしまして、でもなんで私に相談したんですか?」 「え?いや、なんとなく」 謝りなれてそうだから、なんて口が裂けてもいえないよなー。 他にも色々聞いてみた。 「あんな見事な逃走しといて謝るのは難しいんじゃないの?そもそも私謝り方なんて知らないわよ」 そういやキュルケが謝っている所は見た事ないな。 「……知らない」 素っ気ねーなあ、でも話してくれるだけマシなのか?この前マリコルヌが完璧に無視されてたしな。 「プレゼントで機嫌をとれば良いのさ!薔薇とかはどうだい?」 それは金がもったいない。そもそも金を持ってない。 結局有効な手は見つからなかった。 仕方ないので直球で行く事にする。 部屋の前で深呼吸。 落ち着いて謝罪の言葉を思い浮かべる。部屋に入って『ゴメンナサイ』。 これで大丈夫だ。というかこれしかない。 ドアをノックする。 「誰ですか?」 「イギーです。謝りにきました」 おれはドアを開け、コルベールの部屋に入った。 「えーと、その、ゴメンナサイ」 「別にもう良いですよ。何とか修理もできそうですし」 何とか許してもらえた。 だがちょっと元気が無いみたいだ。心なしか頭にもいつものような輝きが無い。 机の上を見ると確かに教室に入ってきたときの物があった。 「すいませんでした。ところでそれ何?」 謝るのが目的だったがどこか見覚えのあるそれに興味がわいた。 「聞いてなかったのですか?」 そりゃまあ、寝てたし。 「これはですね、まずこうやって油を気化させて…」 コルベールは足でふいごを踏んだ。 「そうするとこの円筒の中に気化した油が放り込まれます」 コルベールは円筒の横に慎重に杖の先っちょを差し込み、断続的に発火させた。 「すると円筒の中では気化した油が爆発し、その力でピストンが上下に動きます」 あ、分かった。これエンジンだ。 「動力はクランクに伝わり車輪を回します。そうすると…」 コルベールは箱についている扉を見る。 「ヘビ君が顔を出してぴょこぴょこご挨拶するはずなんですが…」 机の上にはヘビ君の破片があった。 「まだヘビ君は修理していないんですよ」 本当にゴメンナサイ 「でもスゲーな、エンジンだよコレ」 「えんじん?」 「そう。おれの故郷ではこれをつかって車を動かしてるんだ」 おれはコルベールに車とか飛行機とか船とかの事を話した。 その最中におれが異世界の出身であることも話した。 実はこれ、ルイズにも言ってないんだけど別に隠してた訳じゃあないので問題ない。 「機械か…私にも作れるでしょうか?」 「うーん、難しいんじゃあないかな、あんたの系統は火だろ?」 「そうですか…」 コルベールの系統は火だ。何かを作るのに向いているのは土系統。 出来なくはないが難しいだろう。 そうだ! 「まず簡単な物を作るんだ」 「簡単な物?」 「そしてそれを売ってその金で土のメイジを雇うんだ」 「なるほど!」 「もしかしたら他にも同じ考えのヤツが見つかるかもしれない」 「仲間も増やすのですか!それは良い考えだ!」 その後すぐに何かのサンプルを作りたかったがコルベールは明日から用事があって学院を離れるのだそうだ。 仕方が無いので今日はここでお開きとなった。 サンプルの第一候補は今のところ『折り畳み傘』だ。アレは地味に役に立つからな。 鞄に入れておくだけで急に雨が降った時にも大丈夫!この英知の結晶は素晴らしい!一言にまとめると人間傘下! そしてこれは大収穫だ。 コルベールの協力があれば機械は無理にしても様々な道具が作れる。 作る国の方向性が見えてきた。『技術の優れた国』だ。 おれは意気揚々と部屋に帰ったが、部屋の前で思い出した事がある。 ルイズも怒ってたんだよなあ、すっかり忘れてた。どうしよ。 意を決してルイズの部屋に入る。 「あ、おかえりー」 あれ?何で怒ってないの? てっきり罵詈雑言の後に体を切られたけどズレたままで固定されたり 体を小さな板のように切り崩されてそれでドミノ倒しされたり 息を吐けなくされたり吸えなくされたりして最後にご飯抜きの刑が待ってると思ったのに。 まあ良いや、怒ってないならそれで良い。話題を逸らしてやり過ごそう。 「いや勘違い、で何やってるの?」 「見て分からない?」 ルイズは机で本を読んでいる。だがその本のページは真っ白だ。 つまりあれは本ではなくノートということだろうか。 そして机の上には筆記用具。 考えに考えた末におれは答えをだした。 「分かった。作詞だ」 多分バンドでも組むつもりなのだろう。 なるほど。これに集中しすぎて怒りを忘れたって訳か、やっぱバカだな。 「正解。作詩よ、でもよく分かったわね?」 「これでも使い魔ですから」 とりあえずへつらっておく。 「やっと使い魔としての自覚が出てきたみたいね。 んなワケねーだろ。 「これはね、姫様の結婚式で使うのよ」 お、頼んでも無いのに説明しだした。 これは話したくてしょうがないって事だから適当に聞いて適当に相槌を打っておこう。 「……(説明中)……という訳なのよ」 「へー」 「そういえば午後は見なかったけど何してたの?」 このタイミングでそれ?てっきり完全に忘れたと思ってたのに。 「あれ?そういえば何か午前中に大変な事があったような…」 思い出すな、頼むから思い出すな。 「何があったっけ?確か最初はコルベール先生の授業で……」 おれが悪かったような気がするから止めて! 「コルベール先生が変な装置を披露して……あ!」 NO!remember(思い出す)NO! 「イギー、さっきはよくも逃げてくれたわね」 にこやかに言うな!まだ怒鳴ってくれた方が怖くないから! ルイズが息を吸い始めた。怒鳴りだす準備だ。 「バカ犬~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」 おれは逃げ出した。謝れって?無理だよあんなの。 ちょっと走ったら少しドアが開いてる部屋があったので飛び込む。 そこにはギーシュとモンモランシーがいた。 「匿え!」 命令形の文で話し、ベッドの下に隠れる。 「何なんだね君は!」 「うるせー!静かにしてろ!」 ギーシュに怒鳴り返す。って怒鳴っちゃマズイだろ、おれ! 「この部屋にいるのね?」 悪夢が、悪夢がやってくる! 「人の部屋でブツブツ言わないでくれたまえ」 勢い良くルイズが入ってきた。 「ここにイギー来なかった!?」 「来たよ。ベッドの下」 バラすな! 「なるほど?ベッドの下とはまたセコイ所に隠れたわね?」 ベッドの下を馬鹿にするなよ。 ここには青少年の秘密が隠されているんだ。ここはモンモンの部屋だからそんな物無いけど。 「捕まえてこの世に生まれた事を後悔させてやるわ!」 うわ、完全に悪役の発言だよアレ。 「それはそうとこのワインもらうわよ」 「あ!それは…」 モンモンの静止も空しくルイズはワインを飲んでしまったらしい。 だがワインを飲んでいるという事はつまり上を向いているという事! おれはこの隙に部屋から逃げ出した。 再び廊下を走る。 でももう入れそうなドアは無い。 厨房とかおれが普段行く所はバレるだろうし、どうしよう。 走ってる内に前方に人影発見。キュルケだ。 おれはキュルケの後ろに隠れる。 「ちょっと、何よ?」 「すぐ分かる」 そう、すぐ分かる。 すぐにルイズが来てキュルケに噛み付くだろう。そしておれはその隙に逃げる。 完璧な作戦だ。 「キュルケ!?どきなさ…」 ルイズがやってきてキュルケを見つけた。が、様子がおかしい。 キュルケを見たまま動かないのだ。 そしてキュルケに跳びかかり、抱きついた。 抱きついた。 ルイズが、キュルケに、抱きついた。 「キュルケってやっぱりスゴイわね~。胸とか、胸とか、胸とか。もう大好き!」 胸しか褒めてねーじゃん。同感だけど。 ルイズはキュルケをどこかに運んでいく、すごい力だな。 キュルケも抵抗するのだがルイズが間接を押さえているのであまり意味が無い。 ここで逃げたほうが賢いのだが好奇心からおれも付いていく。もちろんすぐに逃げられる距離を保ちながらだが。 そのままルイズは自分の部屋にキュルケを持ち帰った。 あ、コレはヤバイ。R指定だ。 これ以上は色々ヤバイ事になるので別の寝床を探そう。 部屋から離れようと思ったらキュルケの部屋からフレイムが出てきておれに話しかけてきた。 「あの、マスターからすぐに助けるよう言われたんですが、なにがあったんですか?嫌な予感がするんですけど」 どうやらキュルケがフレイムに助けるように言ったらしい。 「行かない方が良いぞ」 「でもマスターの命令ですし…」 やはりフレイムも行きたくないらしい。 「おれに邪魔された事にすれば良いだろ」 「あ!そうですね!」 キュルケの部屋はこんな時間でも訪問者があるらしいので、フレイムと別の寝床を探すことにした。 「お兄様たちと一緒に寝れるなんて嬉しいのね!」 おれ達もお前が寝ている場所を貸してくれて嬉しいよ。 ありがとうな、シルフィード。 その日の夜。女子寮にR指定なR指定がR指定だったらしい。 To Be Continued…
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前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔 ルイズは久しぶりに上機嫌だった。 何かが良くなったわけでもない。午前中もやっぱり魔法は失敗してしまった。 それでもルイズの心は軽かった。 ここ最近ずっと味気なかった食事も、今はなんだかとても美味しく感じる。 康一が教室で言ってくれた言葉を思い出した。 そうだわ。わたし、まだ17なんだもの!これからどんなことがあるか分からない。 まだ自分の『運命』に絶望するのは早すぎる! 使い魔だって、最初はみんなと違ってたからがっかりしたけど、よく考えたら人間なんだから、猫や鳥を召還するよりずっと上等だわ。 ルイズは食事を終え、ナプキンで口元を拭いた。 午後は自習らしい。せっかくだから魔法の練習をしよう! そこに数人の男子が通りがかった。 そのうちの一人が、ポケットから小瓶を落としたので、ルイズは声をかけた。 「ちょっと。何か落としたわよ。」 ん?と振り向いた顔を見て、ルイズはゲッという顔をした。 ギーシュ・ド・グラモン。さっき教室でわたしに嫌味を言った、キザで嫌なやつ! 「なんだいルイズ。もう片付けは終わったのかい?」 ギーシュがいかにも嫌味な口調で言った。 ルイズは思わず怒鳴りそうになったが、我慢することにした。 確かに、自分の失敗のせいで彼にも迷惑をかけた。だからぐっと堪える。 「ええ。ミスタ・コルベールにもういいって言われたの。それより、その小瓶。あんたが落としたんでしょ?」 と、床に落ちている紫色の小瓶を指差した。 今度はギーシュのほうが、ゲェ~!!という顔をした。だが、瞬時に表情を取り繕うと、 「し、知らないね。それはぼくのものじゃないよ。適当なことを言わないでくれたまえ。」 と背を向けようとする。 「嘘!あんたのポケットから落ちたの見たんだから!いいから持っていきなさいよ!」 別にギーシュのことなんかどうでもよかったが、適当よばわりされたのは我慢ならなかった。 すると、ギーシュと一緒にいた友人達が、「おおっ!」と騒ぎ始めた。 「おい、ギーシュ!それってもしかしてモンモランシーの香水じゃあないのか!?」 「そうだ!この鮮やかな紫色の小瓶・・・間違いない!モンモランシーのだ!ギーシュ・・・お前モンモランシーと付き合ってるのか?そうだろ!」 「あ、あんまり騒ぐんじゃない!いいかい?彼女の名誉のために言っておくが・・・」 ギーシュが否定しようとしたとき、ルイズの後にあるテーブルから、一人の女の子が立ち上がった。茶色のマントだから一年生だろう。 その栗色の髪をした可愛い少女は、涙ぐんだ目でギーシュを見つめた。 「ギーシュ様・・・やはりミス・モンモランシーと付き合っておられたのですね・・・」 ぼろぼろと涙がこぼれる。 ギーシュは慌てて女の子の肩を抱いた。 「い、いやだな。ケティ。そんなつまらない勘違いで美しい顔を涙に濡らさないでおくれ。ぼくはいつだって君一筋なんだから・・・」 「へぇ~~~?君一筋・・・ねぇ。」 ギーシュはぎくりと固まった。ゆっくりと声をしたほうに顔を向けると、きれいな金髪の巻き髪をした女の子が立っていた。 「ギーシュ。あなた、やっぱり一年生の子に手を出していたんだ・・・」 ギーシュはケティの肩を抱いていた手をぱっと離した。 「ちち違うんだモンモランシー!彼女とはラ・ロシェールの森まで遠乗りをしただけで・・・。ああっ!その薔薇のように麗しい顔を怒りにゆがめないでおく・・・!」 その瞬間、バッチコーーン!と食堂中に響くいい音をさせて、ケティのビンタが飛んだ。 「ギーシュ様!最低です!」 そして泣きながら走り去っていった。 「ああっ!ケティ!」 思わず手を伸ばしたギーシュに、背後からドバドバとワインが振りかけられた。 ギーシュがゆっくりと振り向くと、モンモランシーはワインの空き瓶を床に投げ捨てたところだった。 「二度と私に近づかないで。」 凍りつくような声色でそれだけ言うと、つかつかと歩き去っていく。 要するに二股をかけていたらしい。ルイズは馬鹿なやつ。とつぶやいて立ち上がった。 ワインまみれで立ちすくむギーシュの横をすり抜けて出口へ向かう。 「待ちたまえ・・・!」しかしそこでギーシュがルイズを呼び止めた。 「・・・・なに?」 ルイズが振り向くと、ギーシュはルイズに薔薇の造花をつきつけた。 「君の軽率な行動のおかげで、二人のレディの名誉が傷ついてしまった・・・。どうしてくれるのかね?」 ルイズは薔薇を払いのけた。 「わたしの知ったことじゃあないわ。ギーシュ。二股かけてたあんたが悪いんじゃない。」 まわりの生徒達がやんややんやと騒ぎ立てた。 「そのとおりだギーシュ!お前が悪い!」 ギーシュの顔に赤みがさした。 「ぼくは君が呼び止めたときに、知らないといったはずだ。そこで引き下がっていれば、こんな騒ぎにはならなかった!」 ルイズは呆れた。心の底から呆れた。こんなやつが貴族を名乗っていいのだろうか。 だから馬鹿にした口調で斬って捨てた。 「あんたが二股をかけるのが悪いんでしょ。『青銅』・・・いや、『二股』のギーシュ?」 集まってきた人垣がどっと笑う。 ギーシュは思わず頭に血が上りそうになったが、それを堪えた。 相手は『ゼロ』のルイズだ。この僕が何をむきになることがある。 ギーシュはやれやれ、と溜息をついて見せた。 「まぁ、君のような似非貴族に、マナーを期待するのが間違いだったか。いいさ、行くがいい。『ゼロ』のルイズ。」 似非貴族!これ以上ルイズの心に突き刺さる言葉は他になかった。 「・・・ヴァリエール家を馬鹿にするならタダじゃおかないわよ、ギーシュ。」 ルイズが声の震えを押さえつけるようにして言うと、ギーシュはふふん、と笑った。 「僕はヴァリエール家を馬鹿にしてなんかいないさ。ヴァリエール家はトリステインでも最も由緒正しき家柄の一つだ!僕はとても尊敬しているよ!」 ただね・・・、ギーシュは口元をゆがめた。 「君は別だ、ルイズ。由緒正しきヴァリエール家に相応しくない落ちこぼれ。未だに魔法の一つも使えない似非貴族とは君のことさ。」 ギーシュはルイズを指差した。ルイズはその指に、自分の心臓を抉られたように思った。怒りと悲しみで言葉が出てこない。 「今日も授業をぶち壊してくれたね。君のような似非貴族がメイジのふりをしているから、僕たちはとても迷惑しているんだ。」 ルイズを助けに入る者はいない。みな、少なからずもルイズに思うところがあったのだ。 ところで・・・。ギーシュは、ルイズの耳元で囁いた。 「君・・・本当にヴァリエール公爵家の子どもなのかい?」 ルイズの頭が真っ白になった。気がついたときにはギーシュに杖を突きつけていた。 「決闘よ!!」 ギーシュは一瞬ぽかん、としたようだったが。やがてぷっと吹き出した。 周り中がどっと笑い出す。 「あはははは!ルイズ!君は自分が何を言っているのか分かっているのかい?君が僕と決闘だって!?」 ギーシュが馬鹿にしたようにいった。ルイズは震える声で答えた。 「そうよ!わたしはあんたに決闘を申し込むわ!」 ギーシュは、笑うのをやめた。でもねぇ・・・ 「この学院では決闘は認められていないんだよね。特に『貴族と貴族の決闘』はね・・・!だから、君がこうお願いするなら受けてもいいよ。」 芝居がかった口調で続けた。 「『今まで貴族のふりをしていてすみませんでした。わたしはしがない平民ですから決闘を受けてください』とね。」 口笛が飛んだ。騒ぎを聞きつけてあつまった人垣から「いいぞー!やれやれー!」と野次が飛ぶ。 くやしい!くやしい!くやしい!くやしい! ルイズは手を裂けんばかりに握り締めた。 どうがんばっても、わたしよりこいつのほうが貴族らしい・・・。そんなことくらい自分が一番分かっている。 貴族にも、平民にもずっと馬鹿にされてきた!誰もはっきりとは言わなかったが、ギーシュが言っているのは、ずっと自分が思ってきたことなんだ。 わたしはギーシュが憎いんじゃない・・・反論できない自分が情けないんだ!! 涙で視界がゆがむ。座り込んでしまいそうだ。 でも、こんなやつの前で泣いたりするもんか!泣くもんか!泣くもんか!泣くもんか! ルイズは必死に唇をかみ締めてギーシュを睨みつけた。 そのとき、高らかに声が響きわたった。 「それなら、ぼくが決闘を申し込むよ!」 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド ざわめく群集をかき分けて、ゆっくりとギーシュの前に立ちふさがったのは、『ゼロの使い魔』と呼ばれた、小さな平民の男の子だった。 前ページ次ページS.H.I.Tな使い魔
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前ページ/ゼロの使い/次ページ 瓦礫一つ、動くもの一つ無い、ニューカッスル城跡地に三体の鉄像が立ち尽くしていた。 しばらくすると、鉄像が徐々に元の姿に戻っていった。 「驚きましたね。」 「ああ、まさかワルドが自爆するとは・・・」 「そうじゃなくて、あれほどの大爆発の中で生き残った事に驚いたんですよ。」 あの時、マホカンタでは間に合わぬと判断したメディルが鋼鉄変化呪文・アストロンを唱えたお陰だった。 後、0.1秒判断が遅ければマホカンタを使用しているメディルはともかく、他の二人は城の者と運命を共にしたであろう。 「あれは自爆ではない・・・恐らく何者かに爆破させられたのだろう。」 「では、ワルドの他に文と私の命を狙う刺客がいたと?」 「そう考えるのが妥当だろう。傭兵や山賊の一件と言い、奴一人で全てをやったとは思えぬ。」 「とにかく、ここを離れましょう。その刺客が確認に来るかもしれません。」 「さっきも言ったが、僕はここで死ぬ。だから君たちは・・・」 ウェールズは台詞を言い終わることができなかった。 背後から突き出された槍に、心臓を貫かれ、断末魔すらあげる事の出来ぬまま即死したからだ。 「念の為来てみれば・・・道連れにすら出来ぬとは、つくづく役に立たぬ男だ・・・」 槍の主が、得物を死体から引き抜く。そいつは傭兵と山賊を雇ったあの髑髏の騎乗兵だった。 すかさず、メディルが五指爆炎弾を見舞うが、華麗な槍捌きによって、全て弾かれた。 「いきなり、メラゾーマ5発とは随分な挨拶じゃないか。」 「貴様が、もう一人の刺客か。」 「いかにも。呪いのかかった金貨で傭兵と山賊をけしかけたのはこの私だ。」 「よくも、皇太子を・・・!!」 ルイズが失敗魔法を放とうとするのを、メディルが制す。 「止せ。お前の適う相手ではない。」 メディルは無意識のうちに悟った。間違いなくこいつはワルドより格上。 1体1ならともかく、主を守りながら勝てるかどうかは五分五分だった。 「そうそう。私はたださっき吹っ飛んだ役立たずの尻拭いに来ただけなんだ。そしてそれはもう済んだ。 私が君たちと戦う理由は無い。」 「文はどうする?」 「さっき、上層部から連絡があってねぇ。もう文は要らぬと仰りだ。」 「ほう。」 「まあ、私自身が戦う理由は無い・・・だけだがね。」 言われて、メディルはようやく気づいた。いつの間にか周囲が紫色の霧に覆われ、そこから骸の兵士や 中身の無い血まみれの甲冑の群れが這い出してきていることに。 「我が名は死神君主・グレートライドン。冥土の土産に、覚えておいてくれたまえ・・・」 それだけ言い残して、グレートライドンの姿は消えた。 「どうするメディル?」 「この霧、恐らくこの近くで冥界の入り口が開いたのだろう。」 「それって・・・」 「恐らくこの亡者どもは無限に湧いて出るはず。相手にするだけ無駄だ。」 「じゃあ・・・」 「答えは一つ。ルーラ!」 しかし、不思議な力でかき消された。 「やはりそう甘くは無いか。・・・なんてな。」 メディルは手近な魔物にマホカンタをかけた。 「ルイズ、皇太子の死体と私の服の裾を掴め、早く!!」 「わ、わかった。」 言われるがままにするルイズ。 「生憎、着地がうまく行くかどうかは運次第だ。バシルーラ!!」 先程の魔物にかけたバシルーラが、跳ね返ってくる。 その結果、三人はニューカッスル城跡を脱出することに成功したのだが。 「この後はどうするの!!?」 「柔らかい場所か、海上か、その辺飛んでる船の上に落ちることを祈るしかない。ルーラはまだ発動できないんだ。」 「いやあああああああああああ!!!」ルイズの絶叫がアルビオン領空に木霊した。 ルイズ達が一生に一度しかしないであろう、スカイダイビングをしている頃、 アルビオン大陸軍港施設・ロサイスの一室に司祭姿の細い男が玉座に座っていた。 「閣下。」 馬に乗った死神君主が、その男の元へやってきた。 「君か。皇太子はどうした。」 「心臓を一突きに。他2名は取り逃がしましたが・・・」 「冥府の入り口まで開いておきながら・・・か?」 「あのメディルと言う男・・・かなりの切れ者のようで・・・」 「そうか。それにしても、子爵で作った花火は美しかったな。遠くからでも良く見えたよ。」 「皇太子一人吹き飛ばせない、完全な娯楽専用の花火でしたがね。」 「まあ、あれだけ綺麗ならあのお方も満足なさるだろう。それより・・・」 「分かっております。その準備を兼ねて、この世とあの世を繋げたのですから。」 「楽しみだな。トリステインが血と炎に染まる日が。」 「全く持ってその通りで。制圧の暁には閣下はまず何をなさるおつもりで?」 「・・・トリステインにはそれは美しい姫がいるという。ぜひ一度食したいと思っていたのだ。」 「相変わらずですね。百人もの美女を食べておきながら・・・」 ルイズ達は幸運にも、トリステイン国近海に不時着(落下直前、メディルが硬化呪文スクルトを連発し衝撃を和らげた)した。 彼曰く、岩場などの硬い場所ではアストロンを使う予定だったとの事。 事ここに至って、ようやくルーラが使用可能となり、ルイズ達は海水と海藻にまみれたまま、 死体を引っさげて姫に謁見と言う、トリステイン始まって以来の暴挙を成し遂げた。 死体を見せ、事の仔細を説明すると、姫は壊れたかのように号泣し、天もまた、惜しみない涙を流した。 1時間ほど泣いただろうか。ようやく涙の収まったアンリエッタが言った。 「ごめんなさい・・・つい取り乱してしまって・・・手紙奪還の件、有難うございます。 褒美にそなたが望むがままの地位を与えましょう。皇太子の遺体はわが国で手厚く葬ることに・・・」 「とんでもない。私はただ、友人の頼みを聞いたに過ぎません。」 「僭越ながら、姫様に申し上げたい義がございます。」 「何でしょう。」 「姫様はゲルマニアに嫁ぐべきではありません。」 「何故ですか?」 「最愛の男が目の前にいるのに、何故ですか?はないんじゃないか、アンリエッタ。」 ルイズとアンリエッタ、メディル以外は聞き覚えの無い声に、その場にいる者は皆振り向き、目を見開いた。 確かに死んだはずのウェールズ皇太子が立って喋れば誰でもそうしたであろう。 「どどど、どういう事!!?」 「どうもこうも無い。私の魔法で生き返らせたのだ。」 「だって、あれは・・・」 「一部を除き人は無理。確かに私はそう言った。しかし、幸運にもウェールズはその一部だったのだ。」 「一部の人間ってどういう定義で決まるの?」 「黄泉の国から舞い戻るほどの強い意志、または神や精霊などの何らかの助力。 どちらかを持ち合わせた者のみは蘇生が可能だ。」 「でも、いつの間に・・・もっと早く復活させたって・・・」 「愛しの姫の前に来れば、皇太子の死の淵から生還しようとする意志は強くなるだろうし、 敵には皇太子が死んだと思ってもらったほうが好都合だ。 そう判断し、王室へ戻り次第蘇生を行うはずだったのだが、姫が泣き出したお陰で、 タイミングを逃し、30分待っても泣き止む気配が無いので、復活させたが、 皆姫に気を取られていて気が付かなかった。で、今ここに至るわけだ。」 「ミスタ・メディル、その術で、我が王党派の者達の復活を依頼したいのだが・・・」 「残念だがそれは無理だ。あの爆発で全員、跡形も無く消滅してしまったし。時間も経ちすぎた。 灰や消し炭となった者、死後一時間以上経った人間はいかに私とて救えない。前述の助力を持つ者は時間に関係なく死体と意志さえあれば蘇生出来るが、 残念ながら、あの城の者達にそういう物は感じられなかった。 あの城の者達の毛髪でも肉片でもいいから、死体の一部があれば姫が泣き止む前に蘇生出来たかもしれぬのだが・・・」 「そうか・・・やはり叶わぬ願いだったか・・・」 「でも、良かったですね。姫様。」 「ええ・・・でも・・・」 「なりませぬぞ、姫!」 突如口を挟んだのは民から鳥の骨と呼ばれているマザリーニ枢機卿であった。 「一通の手紙でさえ、危うく国を危機に貶める所だったのに、事もあろうに・・・」 「この場の全員が口を閉ざし、皇太子は外部から見えぬ所で・・・ たとえば地下牢や隠し部屋で生活していただく。これならばどうと言うことはあるまい。」 「ききき、貴様。一国の姫に、不倫しろとでも言うつもりか!!?」 「敵から身を隠すためとはいえ、地下牢は勘弁してもらいたいな。」 「不倫しろといった覚えは無いし、さほど長い時間隠れていろという訳でもない。」 「どういう事?」 「間もなく、レコン・キスタが攻め込んでくるだろう。そもそも政略結婚の発端は奴らを倒すため、 同盟を結ぶしかなかったから。逆に言えば、奴らを倒せば晴れて堂々と結婚できると言うわけだ。」 「そんな簡単に倒せるわけが・・・」 「私なら倒せる。否、倒して見せる。」 「枢機卿殿、彼は緻密な策を用い、ワルド子爵を死闘の末、打ち負かしたのです。」 「他にも城一つ吹き飛ばす爆発から守る術を使ったり、凄まじい嵐を吹き飛ばしたり・・・ 正に彼の実力は桁外れです。国一つと戦わせても決して引けをとらぬはずです。」 「マザリーニ。私からも頼みます。私の友人とその使い魔を信じてやってはくれませぬか?」 使い魔、公爵の娘、皇太子、そして主君の眼差しに流石の枢機卿も折れた。 「では即刻、軍議に移るとしましょう。」とウェールズが切り出す。 「そうですな。敵の兵力は?」とマザリーニ。 「少なくとも5万。しかし、トリステイン侵攻の際はさらに多くの兵を率いてくるでしょう。」 「我が国の兵では太刀打ちできぬ。メディル殿に頼るしかないか・・・」 「ルイズ、ミスタ・メディル。ちょっと・・・」 二人は君主に言われるがままに、一冊の書の前に来た。 「これは始祖の祈祷書。指輪を嵌めた特定の者のみ、読めると言われています。メディル、あなたのルーンは始祖ブリミルの使い魔の物。 すなわちルイズ、あなたは始祖の使い魔の後継者を呼び出したと言えるのです。」 「なるほど。そのルイズならその書を読めるかも知れぬと。」 「はい。ミスタ・メディルの力を疑うわけではありませんが、保険は多いに越したことはありません。 あわよくば、この書にはこの戦を左右することが記されているかもしれないのです。」 「わかりました。」 返事と共に、書を手に取り、ゆっくりと読み上げるルイズ。その手には水のルビーが嵌められていた。 現段階で祈祷書から得られた情報はルイズが失われた虚無の使い手であり、彼女の爆発は失敗ではなく 虚無の初歩の術・爆発によるものであったこと。 そしてルイズは初歩の魔法『爆発』を覚えた。 「それはさておき、この度女王陛下のお耳に入れておきたいことが。」 「何ですか?」 「実は―」 「何と、そのような。」 「従わぬようなら国家反逆罪で処刑すればいいでしょう。」 「しかし、それは・・・」 「私も黙ってやるつもりでしたが、姫様の仰った通り、準備は多いに越したことはありません。」 「・・・分かりました。後ほど部隊を派遣します。」 「さて、これでお前と私はこの国の命運を左右する存在となったわけだ。」 「そんな・・・」事の重大さに、流石のルイズも腰が引けているようだ。 「人間とは死ぬ気になれば、誰かの為ならば、我ら魔族にも勝ることがある・・・認めたくは無いがな・・・」 その時ルイズは、使い魔の仮面の中に切なげな表情を見た気がした。 「ごめんなさい・・・」 「・・・謝る事は無い。お前が魔王様を殺したわけではないし、そもそも先に手を出したのは我らだ。 予想外の結果に終わったとは言え、戦と言うものの真理だと割り切っている。」 以前の自分では到底考えられぬ言葉に、彼は少しだけ自分の変化を自覚した。 ―ここへ来てまだ、数日しか経っていないと言うのに、随分といろんな目にあい、丸くなったものだ。我ながら。 前ページ/ゼロの使い/次ページ
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「……は?今なんて?」 「だから私のダーリンがギーシュと決闘するって言ったのよ」 「そういう事じゃなくて何で貴方の新しいダーリンとギーシュが決闘する事を私に報告するのかしら?ツェルプストー」 「そりゃあダーリンが貴方の使い魔だからじゃないの……」 どこか遠くを見るような目でそう言い放つキュルケに対し (何?さっき打たれたばかりなのに惚れたの?キュルケってもしかしてドM?) と思い、自分の友人がそっち方面であったのかもしれないと思い多少ドン引く が、アブノーマル認定されかかっている事も知らずにキュルケが多少熱を帯びた言葉を続ける。 「そりゃあ急に打たれた時は驚いたわ…今までの彼は私自身や私の家を目当てで優しくしてくれたり甘い事を言ってくれた人ばかり… でも彼は違ったわ…貴族でもないのに私を対等に扱ってくれた初めての人よ…これが燃えられずしてどうするのよ!ヴァリエールッ!!」 もう微熱どころかイタリア・ヴォルガノ島火山より燃え上がっているご様子。 そして完全に放置食らってるルイズ、半分意識が飛んでいた。 「……………って決闘ぉ~~~~!?何プロシュートが?何でギーシュと!?」 そして、数秒送れて肝心の本題に気付く。 「彼プロシュートって言うの…ステキな名前ね…」 完全に自分の世界へ入っているキュルケ嬢。なんかもうルイズの目に『ラリホ~』と言いながら周りを浮かぶ趣味の悪いピエロが見える。 「早くあいつを止めないと大変な事になる…!止めなきゃ!」 (ギャラリーが出来きるであろう決闘で召喚した時にあいつが使った妙な能力を使われたら大惨事になる) という事からプロシュートを止めるという事だったがもう一人の方は 「いいじゃない…平民が勝てないと分かっているメイジに挑む…燃えるわぁ~」 などとキュルケがのたまう。 (駄目だこいつ……!はやく何とかしないと……!!) 一瞬だがそういう思考が頭をよぎるが『決闘』という重大事にそれを後回しにする。 半分トリップキメているかのようなキュルケを後にしプロシュートを探す。 居た。というか凄まじく目立っているためほとんど探す必要も無かった。 ちょ、ちょっと!ギーシュと決闘するってどういう事!?」 「仕掛けてきたのはヤツの方だぜ」 (マズイ…!目が本気だ…!) 「人が大勢居る場所であんな物騒な事しないでって言ったばかりじゃない!」 「誰がアレを使うと言った?対処法がバレると厄介なんでな、使うつもりはねぇ」 授業をロクに聞いてはいなかったが水系統の魔法で氷が作り出せるという事は聞いていた。 グレイトフル・デッドの老化に対して唯一有効な手段である「体温を下げる」 生徒とはいえあの大人数の前で広域老化攻撃を使えばそれがバレる可能性がある。 後の事も考えればそれは避けたいとこだ。 「それじゃあアンタに勝ち目なんてあるわけないじゃない!今すぐギーシュに謝ってきて!」 「無駄だな、ヤツは完全にプッツンキてる。例えオメーが謝ったところでどうにかなるもんでもねぇ」 「ああもう、それじゃ逃げなさい!私から何とかうまく言っといてあげるから!」 「ヤツはオレに決闘を挑むという覚悟があってやってるんだぜ? 一時身を隠したとしても必ず追ってくるだろうよ。だからこっちが先に『やられる前にやる』んじゃあねーかッ!」 プロシュートがそう言い放ちルイズをその場に残し広場に向かう。 「……怪我じゃすまないかもしれないのにどうするのよ!」 だが、ルイズが思い違っている事が三つある。 一つは「グレイトフル・デッドというスタンドの存在」 二つは「プロシュートが一級の暗殺者」 そして三つめ「プロシュートにとっての『やる』は『殺る』」であった事… そして『ヴェストリの広場』 「遅かったじゃないか… 逃げ出してしまってたものかと思っていたよもっとも、逃げたところで無駄なんだけどね!」 「殴られた後が顔に出てるぜ?まぁその方が人気が出そうだがな」 「ぐッ…!平民が貴族を馬鹿にした報い受けさせてやるッ! 僕はメイジだ、だから魔法で戦う。よもや文句はあるまい!」 ギーシュが薔薇の造花を振るうと花びらが一枚離れ金属製の人形が一体出現する。 「青銅のゴーレム『ワルキューレ』僕が青銅のギーシュと呼ばれている由縁だッ!」 「その名前ならさっき頭から香水をブチ撒けられた時に聞いたな」 「いつまで減らず口を…!まぁいい、この一体だけで片付けてあげるよ!」 ワルキューレが猛然とプロシュートに突っ込んでいく。 だがプロシュートは動かない。しかし目だけはワルキューレを凝視している。 ワルキューレとプロシュートの距離が2メートルを切りワルキューレが拳を繰り出す。 だが拳が目標に当たりそれを砕く瞬間拳の軌道が瞬時に変わった。 「何ッ!?」 「今の見たか!?」 「ワルキューレの拳の軌道が急に変わったぞ!」 そうギャラリーが騒いでいる間にもワルキューレは両の拳を繰り出すが全て当たる直前に軌道を曲げられてしまう。 「こいつ…!平民のはずじゃないのか!?」 「フン…ノロいな、その程度のスピードじゃあスティッキィ・フィンガースに遠く及ばねー」 自分が最後に戦ったスタンドの名を出しながら性能をS・Fと比較する。 「確かに人間と比べては優れちゃあいるがそれだけだな、特徴としては堅さぐらいか」 そう言い終えた瞬間――ワルキューレが腕と脚と全て弾けさせ砕けた。 「確かに正面装甲は堅いが…関節部はそうでもねーな」 「な…僕のワルキューレに何をした…? 何をしたと聞いているんだ!答えろォォォオオ!!」 「…………」 無言でギーシュを見据えるプロシュート。だが自慢のワルキューレを破壊されたギーシュはそれを挑発と受け取る。 「いいだろう…言いたくないのならそれでいい!嫌でも言いたくなるようにしてやるさ!」 薔薇の造花を振るい6枚の花びらを舞わせ残り全てを出現させる。 ――ギーシュが平民相手に本気になった。そう思った観客が騒ぎ出す (ちッ…六体か) プロシュートのグレイトフル・デッドはそれ自体の拳の射程距離だけなら近距離パワー型に属する。 だがヴェネチア超特急クラスの列車丸ごとをカバーできる老化の射程距離。 これが他の近距離型スタンドとグレイトフル・デッドの差だ。 パワーそのものは近距離型に劣るとはいえある程度のものを有するもののスピードと精密動作性が致命的に劣っている。 それを埋める為の老化だが今回はそれを使っていない。―――つまり ワルキューレの内三体がプロシュートを襲う。 さっきと同じように拳の軌道が変わる、観客達はそう思った。だが結果は違っていた。 ズドォォオオ 一体ワルキューレが吹っ飛ぶ、だが残り二体がその隙を襲う。 片方の攻撃を弾くが、もう片方は間に合わない。 ボゴォ 「うごォっ!」 横からの攻撃を受け吹っ飛ぶ。そしてそれを見たギーシュが勝利を確信したかのように勝ち誇る。 「君のその妙な能力はワルキューレ一体には抗えても複数体だと無理みたいだね その弱点が分かったからには次は残り全てでやらせてもらうッ!土下座するならいまのうちだッ!」 (骨には問題ねぇが…内臓を少しやられたみてぇだな) 立ち上がりギーシュに向き直る、だがその口からは血が出ていた。 「フン、血ヘド何て吐いて神聖な決闘を何だと思っているんだい? まぁ使い魔だけあって少しだけ妙な力があるようだが魔法を使えるメイジに勝てるはずないのさ!」 だが次のプロシュートの言葉はギーシュにとって意外だったッ! 「ハァー…ハァー…それがどうした?」 「何だって…?」 「それがどうしたと言ったんだ」 「この後に及んで強がりかい?みっともないねッ!」 だがそれに構わず言葉を続ける。 「確かに魔法ってのはスゲーもんだ、オレだってそう思う だがなッ!オレが居た場所には空気そのものを凍らせるヤツやあらゆる物体を切断できるヤツなんてのが居るッ!」 ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ┣¨┣¨┣¨┣¨ (何だこいつ…!?周りの空気が急に変わったぞ!) 「オレ達チームはなッ!常にそういう連中を相手にしてきているッ! オメーらみてーなマンモーニが使う薄っぺらい魔法なんかと一緒にするんじゃあねぇッ!」 「…ハッタリのつもりかい?だとしたらメイジも甘く見られたものだ。いいだろう!もう手加減なんてのは無しだッ!」 ギーシュが武器を精製しそれぞれのワルキューレに武器を取らせる。 どれもこれもマトモに受ければ良くて重症、悪ければ死に至るものばかりだ。 「後悔する時間も与えないッ!」 残った6体のワルキューレをプロシュートを囲むようにして布陣させる。これでもう逃げ道は無い。 ギーシュの号令を待つように囲むワルキューレ達、観客の誰が見てもギーシュの勝ちは明らかだと思っている。 ルイズがそれを止めようと観客達を押しのけ間に割って入ろうとする。だが遅かった。 「行けッ!ワルキューレ!!」 そう聞こえた瞬間ルイズはその場に立ち竦み己の使い魔がなぶり殺しにされる光景が脳裏に浮かび――倒れた。 その声を合図としプロシュート目掛けワルキューレが殺到する。 だがプロシュートが取った行動は実にッ!意外だったッ! 普通4方から囲まれているなら身を守るのが当然だッ!だがプロシュートは逆に…… 『思いっきり突っ込んだッ!』 一体のワルキューレ目掛け猛然と突っ込む。その先にはギーシュが居る。 「一体だけなら対処はわけねぇからなッ!」 「ば、バカなッ…!」 固まって動かれればワルキューレの層を突破できない、だから自分を囲ませるように仕向けた。 そうして包囲網が縮まる前に一点突破を仕掛ける。それが狙いだ。 グレイトフル・デッドでワルキューレを投げ飛ばす 壊すのは時間の無駄と判断しての事だ。 「くそぉ…来るなァァァァアアア!!」 ギーシュにさっきまでのような余裕はスデに無い。狼狽しながらも魔法を使うべく杖をプロシュートに向ける。 だが当たらない、ギーシュがいくら魔法を撃っても一発たりとも当たらない。 拳銃と同じだ、落ち着いて心を決めていなければ魔法といえども当たるはずはなかった。 後ろから6体のワルキューレを引き連れたプロシュートが迫り薔薇の杖をグレイトフル・デッドでヘシ折った。 「うぁ……あ…ま、参った…」 貴族が平民に負けた、誰もがそう思った。そしてこの決闘が終わったと思った。 否、実は終わってなどいない(古谷 徹の声で) どこからか『倍プッシュだ』というような声が聞こえたが多分幻聴だ。 「参った…そんな言葉は使う必要がねーんだ… なぜならオレやオレ達の仲間が敵と戦った時の決着は」 次の言葉で観客達のほぼ全てが凍りつく 「どちらかが死んじまってるからだッ!だから使う必要がねェーーーーッ! オメーもそうだよなァ~~~~『決闘』を挑んできたんなら…分かるか?オレの言ってる事…え?」 「ひぃ…!こ…殺される…助け…」 だがその言葉は最後まで言えない、グレイトフル・デッドが首を掴みギーシュの体が中に浮く。 「ギ、ギーシュが浮いたぞ!」 「いや…違う!見ろ、首を何かに『掴まれて』いるッ!」 グレイトフル・デッドは見物人達には見えないが何かに首を掴まれている跡だけはハッキリと見えた。 ズキュン! 「何だァーーーーーッ!あれはァーーーーッ!!」 観客達が騒ぎだす。当然だ、ギーシュがあっという間に老人の姿になったのだから…! 「うわぁぁぁぁ!やっぱり…あれは夢じゃあなかったんだッ!『ゼロ』の呼んだ使い魔は…悪魔か何かなんだァーーーーッ!」 そう叫ぶのは最初に巻き込まれた連中だ。それを皮切りに他の者が次々と騒ぎ出す。 ドザァァア ほとんどミイラと化したギーシュが地面に崩れ落ち、周囲から悲鳴や怒号が上がる。 中にはプロシュートに杖を向けている物さえ居る。 だがプロシュートはあくまで冷静に言い放つッ! 「これぐらいの事で騒ぐんじゃあねぇッ!オレがいた世界ではな! 決闘を仕掛けて『参った』なんていう負け犬は居ねーんだからな…」 ピクリとも動かない元ギーシュの首に足を乗せ―― 「『ブッ殺す』と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!!」 その言葉と同時に広場に乾いた音が鳴り響びく。この場を見ていない者であれば枯れ木を踏んだかのよに聞こえたであろう。 そして、その瞬間その場に居た者達は理解をする。 仕掛けられた決闘とはいえ貴族を―メイジを顔色一つ変えることなく滅せる者がただの平民ではないという事を。 ギーシュ・ド・グラモン―死亡(頚椎骨折) 二つ名 「青銅」 戻る< 目次 続く
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反省する使い魔! 第三話「報いか試練か反省か」 出所当日、オレは家に帰ろうと駅に向かい電車に乗ろうとしたところを いきなりルイズとか言う奴のおかげでわけのわからねーところに連れてこられちまった… 神様よぅ、あんたはまだオレを許してくれねーわけか?恨んでるわけか? ええおい?三年前、確かにオレは形兆を殺した、盗みもやった なのになんでだ?オレは三年間、刑務所に入って反省はした筈だ。 実際今だって、形兆を殺したことをオレは後悔しているんだぜぇ… あいつは気に入らなかったがオレなんかと違いかわいそーな奴だった。 形兆は自分の父親を救ってやりたいが為に弓と矢を使ってきたんだ。 それに比べオレはどうだぁ?ええ?当時の俺はただ日頃のつまらねえ 繰り返しをするだけの社会に不満を感じ刺激的の人生を求めるがために 弓と矢を奪い…使っていたんだ。 虹村形兆という男を殺してまで……最低だな、オレ 都合のいい話かもしれないが音石は刑務所に入ってから ゆっくりと時間を掛け自分の行いを思い返していくことにより 自分がどれだけ酷い事をしたのか自覚することができていた… そしてそれを自覚し反省したが上で彼は今日出所した… そう!自分の罪を受け入れたからこそ彼は杜王町に戻る覚悟があったのだ!! 東方仗助、虹村億泰、広瀬康一、岸辺露伴などといった 「黄金の精神」を持つ若者達と向き合う覚悟が彼にはあったのだ!! (杜王町で億泰に会ったらまたぶん殴られるのを覚悟してたんだがなぁ~…) 「ちょっと!アンタちゃんと聞いてんの!?」 「ん?ああワリィ…考え事してた」 「ッ~~~~!!あんたねぇ~!」 「悪かったって、俺だっていきなりで結構混乱してんだよ、 サモン・サーヴァントだっけ?その使い魔っつーのを召喚する儀式で オレを召喚したってことはちゃんと理解してるぜ」 「そう!そしてここは!」 「ハルケギニアっつー世界の神聖なるトリステイン魔法学院……だろ?」 「…なによあんた…やっぱ知らないとか言って実は知ってるんじゃあ…」 「そんなんじゃねーよ、ただ単に記憶力がいいだけだ」 その言葉にルイズがふーんと言って目を細めている。 先程のハルケギニアを知らないと言う音石の質問を 自分をバカにしてるんじゃないかとまだ疑っているようだ。 「でも、最後の所だけ聞きそびれちまったんだ、なんだっけ…使い魔の…えーと…」 「使い魔の役目よ」 「そうそうそれだ、そこんとこよくわかんねーんだよ、もう一回頼むわ」 「たくっ、仕方が無いわね…いい?使い魔って言うのは 主人を守り、手となり足となり一生主人に仕える、それが使い魔よ!」 「なるほど……ん!?ちょっと待て…一生?今、一生って言ったのか!?」 「そう一生よ、当たり前じゃない」 ハァ~~~~~~~~~~~ッと音石は深くため息をついた。 当然だろう、いきなり呼び出され一生使えろなど無理な話である。 「なによそのため息、何か不満があるわけ!」 「逆に聞くがこんな状況にされて不満を感じねーって言うのもどうかと思うぜ…」 「う……、うるさいわね!私だってまさか人間が召喚されるなんて 思っても見なかったもの!仕方ないでしょう!」 「随分といい加減な召喚だなァ、おい…」 「あんた!神聖なるサモン・サーヴァントを侮辱するつもり!?」 「そうは言ってねーよ…なあ、悪いことは言わねぇから俺を送り返してくれねーか?」 「無理よ」 「即答かよッ!!」 「だって、使い魔を送り返す魔法なんて聞いた事ないもの、仕方が無いでしょう」 「改めて言うがマジでいい加減だなァおい!」 「うるさいうるさい!私だって本当はドラゴンとそういうのを期待してたのよ!? それなのにアンタみたいな平民を召喚した私の気持ちがわかる!?」 「オレ魔法使いじゃねーからわかんねーよ」 「メイジよ!!」 「はいはい………!」 その時音石は気付いた、ルイズが涙目になっているのを… それと同時に昼間のことを思い出す彼女が自分という平民を 召喚したことにより周りからバカにされたあの一部始終を… 「………はァッ」 「なによそのため息!まだ文句あるの!?」 「……なるよ…」 「大体アンタ平民の癖に生意気……え?」 「なにマヌケな顔してんだよ…、なってやるよ…その使い魔とかによォ~」 「使い魔になるって……、ほ、ホント!?ほんとにほんと!?」 「ホントにホントだ、ただし帰る手段が見つかるまでだがな…」 「そ、そう…わ、わかればいいのよ!わかれば!」 (涙目で威張られてもな…それと無い胸で胸を張るな) そして音石は壁にもたれ掛かり、ルイズはベットに腰を下ろした。 「そう言えばあんた異世界からどうとかって言ってたけど異世界ってどういうこと?」 「言葉通りの意味だよ、このハルケギニアとは異なる世界から呼び出されたってこった」 「信じられないわね…、大体アンタなんでハルケギニアが異世界だって断言できるのよ?」 「簡単だ、文化が違いすぎるからな…そしてなにより」 そういうと音石は窓を見た 「なにより…なによ?」 「俺がいた世界には月は1つしかねーよ」 「はあっ!?なにそれ!?月が1つってどんな世界よ!?」 「オレからしたら月が2つあんのがどんな世界だって話だがな…」 「…やっぱり信じられないわね、わたしをバカにしてるんじゃないの?」 「まあ、好きにしな…信じようが信じなかろうがおまえの勝手だ」 「お前って…私はアンタの主人よ!ご主人様と呼びなさい!」 (めんどくせぇ……しかし、まあ退屈はしなさそうじゃねーか) その時、窓を見ながら音石の顔は薄く笑っていた。 「それじゃあ、これ明日になったら洗濯しといて…」 「ああ、悪い…せっかくだしちょっとそこらへん散歩してくるわ」 「はっ!?え、ちょっと…あんた」【バタンッ】 「行っちゃった…、もう!なんなのよアイツ!!いきなり変な楽器で演奏するし 異世界からとか訳わからないこと言うし、散々文句言ってたくせに急に素直になるし…」 その時、ルイズはハッと気づいた。 「も、もしかしたらアイツ、散歩とか言って逃げる気じゃあ…」 そんな何気ないマイナス思考な一言がルイズの顔色を青く変えた。 (も、もし召喚初日に使い魔に逃げられちゃったら…みんなになんて言われるか …い、いいえ、それだけじゃないわ!実家にいるお父様やお姉様になにされるか… こ、こ、こ、こうしちゃいられないわ!直ぐにアイツを連れ戻さないと!!) バタンッ!と甲高い音が廊下に響き渡らせ、ルイズは階段を駆け下りた。 現在音石も階段を駆け下りながらいろいろ考えていた。 異世界か…、出所していきなりとんでもねーゴタゴタに巻き込まれちまったが 悩んでてもしょうがねぇ、前向きに行くとするか… そうだぜ音石明、逆に考えるんだ 異常な事に巻き込まれているが逆に言えばオレはとても貴重な体験をしている。 よし、これでいこう! そして階段を降りると廊下に突き当たった。そしてその廊下には 金髪のいかにもナルシストを思わせるキザっぽい少年と 茶色のマントをしたおとなしそうな少女が楽しそうに会話していた。 「ケティ…君はやはりいつ見ても美しいよ…まるで女神のようだ」 「まあ、ギーシュ様、本当ですか?」 「もちろんだともケティ、僕が君にウソをつくわけ無いじゃないか」 「ギーシュ様……」 「ケティ……」 「あー…、お楽しみのところ悪いんだがちょっといいか?」 「うわァッ!?」「きゃあッ!!!」 二人とも音石の存在に気づいていなかったのか 突然声をかけられたため予想以上に驚き、声が重なっていた。 少女に関しては驚いた勢いで床に倒れ尻餅をついている。 「ああ、ワリィ…驚かせるつもりは無かったんだが…大丈夫かよ?」 「イタタタ…」 「ケティ!ちょっと君ぃ、横からいきなり口出ししてくるなんて無礼だぞ!」 ギーシュという少年が音石をキッ!と睨む。 ふと、ギーシュはその男に見覚えがあるのを思い出した。 「君は…たしか、ゼロのルイズが呼び出した平民か?」 「覚えてもらっているとは光栄じゃねーか」 すると尻餅をついているケティという少女が意外そうな顔で音石を見る。 「この人が!?一年の間でも有名ですよ!……ッ、あいたた」 「おいおい、足でも挫いたんじゃねーのか?立てるか?ほら……よっと!」 「え!?…あ、ちょ…」 「なッ!?……な、な…」 すると音石はケティの手を取り、彼女を引っ張り立たした、 ギーシュは音石の予想外の行動に唖然している。 「なんともねーか?」 「あ…いえ、あ、ありがとう…ございます…」 まさかいきなり手を掴まれるとは思ってもいなかったのか ケティは若干顔を赤くしている。 「おい、君!本当に無礼な平民だな!!平民が貴族の手に気安く触れるなど 立場をわきまえたまえ!!」 「いえ、いいですギーシュ様!私は別に気にしてませんから!」 勢い余るギーシュをケティが静止をかける。 「だから悪かったって、ただちょっと道を尋ねたいんだが…外に行くにはあの階段を降りればいいのか?」 そう言って音石は下に通じているであろう下り階段を指差した。 ギーシュは興醒めといわんばかりに薔薇を顔に寄せる。 「ふん、愛しのケティに免じて許してやろう…、ああ、その通りだよ」 「そいつはどうも…」 そう言うと音石は何事も無かったかのように階段を下りていった。 「たくっ…大丈夫かいケティ?」 「ええ、私は大丈夫です」 すると音石がやってきた登り階段から足音が聞こえてくるのに気づき ギーシュとケティは何事かと階段を覗き込んだ、そこからやって来たのは… 「おや?ルイズじゃないか、どうしたんだいそんなに慌てて…」 「ギーシュ!私の使い魔見なかった!?」 「君の使い魔?彼ならさっき階段から降りていったが……、おいおいルイズ まさか君は使い魔に逃げられたのか?フッ、まったく、使い魔もロクに扱えないとは さすがは『ゼロのルイズ』だな、期待は裏切らないでくれるよ」 「うるさいわよギーシュ!もう、あいつ変に足が速いんだから…ギーシュ!ちょっと 捕まえるの手伝って!!」 「やれやれ仕方がないな、いくらゼロとは言え女性の頼みだ すまないケティ、すぐに戻るよ」 「あ!ぎ、ギーシュ様ぁ!!」 下り階段に向かうルイズの後をギーシュが続いた。 階段を下り室内噴水広場にでるとそこにはルイズが良く知る褐色肌の女性と 小柄で眼鏡をかけた水色の髪をした少女がいた。 「あら、ルイズにギーシュじゃない、一体どうしたのよそんなに慌てて?」 「キュルケ!私の使い魔見なかった!?」 「ああ、顔に大きな傷のある彼なら向こうの階段に降りていくのを見かけたけど?」 「ギーシュ、行くわよ!」 「やれやれ…」『タタタタタ……』 「なんだかおもしろそうねぇ、タバサ!行ってみましょう!」 タバサと呼ばれる少女は読んでる本を閉じ、無言のままキュルケの後に続いた。 「改めて見てみるとマジで異世界っつーことが実感できるな」 音石は学院の外に出てみると視界に入るものすべてが元の自分の世界とは かけ離れている事を実感した。 夜空に浮かぶ2つの月、見たことも無い巨大な城、使い魔を引き連れているメイジ どれもこれもがファンタジーやメルヘンの世界だった。 「おや?君は…」 「ん?」 すると不意に声をかけられ音石は顔を向けると そこにはいたのは昼間の禿げ頭の男だった。 「あんた…確か昼間の」 「コルベールです、この魔法学院で教師を務めています」 「あ~どうも、オレ音石明っつーもんです」 「オトイシアキラ?変わった名前だね」 「(そりゃ変わってるだろーよ…)あのー、俺になんか用ッスか?」 「おお、そうだった!なに…君の『ルーン』をスケッチするのをうっかり忘れていてね 今からミス・ヴァリエールの部屋に伺おうとしていたのだが手間が省けたよ」 「『ルーン』?なんスかソレ?」 「『ルーン』を知らないのかい?使い魔としての紋章だよ」 「紋章」という言葉に音石は心当たりがあった。 「あ!もしかして左手にあるこいつッスか?さっきから気になっていたんスけど…」 「おお!それだよそれ!…ふむ、珍しい『ルーン』だな、後で図書館で調べてみよう ところでオトイシ君、さっきから気になっているのだが…」 「…?…なんスか?」 「君がぶら下げているソレは…楽器かなんかかい?」 それを聞いた瞬間、音石は納得した。 なるほど、確かにこの世界は俺らの世界で言えば中世ヨーロッパあたりだからな… ギターがないのは当たり前か…、楽器はあるみてーだが良くてもヴァイオリンあたりだな。 「こいつはギターッス」 「ギター?」 「オレの故郷にある楽器みたいなもんッスよ」 「民族楽器みたいなものかい?」 (民族楽器って…このハゲ、オレをなんだと思ってんだぁ?…) 「ふむ…実に興味深いな、よければまた今度 演奏してみてくれないか?今夜はさすがにもう遅いが…」 「はぁ~、わかりました……って、うおおッ!!?」 「なっ!?オ、オトイシ君!?」 なんと突然、音石の体が宙に浮き始めた! 「やれやれ、貴族の手をここまで煩わせるとはとは…、終わったよミス・ヴァリエール」 「助かったわギーシュ」 そこにいたのはルイズとギーシュ、そして面白半分でついてきたキュルケ そしてそのキュルケについてきたタバサであった。 「お、おい!一体なんのつまりだァコラッ!?降ろしやがれ!」 「うっさいわね!あんたがいきなりどっか行くからじゃない!」 「だから散歩だって…」 「嘘ッ!!そんなこと言って逃げる気だったんでしょう!?」 「なんでそうなんだよ!?」 「あっはっはっは、さすが『ゼロのルイズ』ね!使い魔に逃げられるなんて!」 「黙りなさいキュルケ!!」 「だから散歩だって言ってんだろーがぁ!誤解だ!さっさと降ろせぇ!!」 「彼の言うとおりだ、ミスタ・グラモン…降ろしてあげなさい」 その日頃聞き慣れた声がコルベールだと気付き それを最初に驚いたのはギーシュだった。 「コ、コ、コ、コルベール先生!?」 キュルケも「やっば…」と小さく呟いたが その一方でタバサは本を読んだまま動かないでいる。 しかしルイズは… 「先生!あいつは使い魔のくせに逃げ出そうとしたんですよ!」 「それは何かの誤解じゃないのかい?落ち着きたまえミス・ヴァリエール 彼とはさっきから一緒にいたがそんな素振りは全くありませんでしたよ?」 「で…でも、勝手にいなくなる使い魔なんて…」 「ミス・ヴァリエール…確かに彼は使い魔ではあるが人間だ 人間である以上、自分で行動するのは当たり前だろう? …それとミスタ・グラモン、いい加減降ろしてあげなさい」 「あ!は、はい!」 【ドサッ!】「いってぇ~~…」 「わかりましたか?ミス・ヴァリエール」 「…はい」 「よろしい…ではみなさん、私は部屋に戻ります 明日も授業がありますからくれぐれも寝坊しないように…」 コルベールはそう言うとその場を後にし 続いてキュルケ、ギーシュ、タバサも続いてその場を後にした。 ルイズと音石もその場を去り部屋に戻ってきた、 「おい…」 「……………」 「今更どうこう言うつもりはねーがよー…お前なに焦ってんだよ?」 「……あんたには…関係ないでしょう…」 そう言うとルイズは制服のままベッドに入り込んだ。 「おい待てコラ!オレはどこで寝ればいいんだァ!?」 「そこの藁の上」 「………」 (ないよりは…マシだな…) 音石は自分に言い聞かせ藁の上に腰をかけゆっくりと 眠りに付いた…。 To Be Continued →
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魔法学校学院長室、ドッピオは決闘をしてからたまにここに来たりします 点前では使い魔の中で不思議な力を使うという噂が広まり学院長自らが調べるためと言うものですが ドッピオと学院長オスマン自身はここにとっての異世界、地球の話をしていることが多いのです 最初にドッピオの不思議な力、スタンドについても 「まあわしらには見えんし悪用さえしなければの。ただしまた決闘があるなら直接、貴族をそれで殴るのは勘弁しとくれ」 などといってお仕舞いでした 今日もまた異世界についての話をしていますが主だった事が話しきったので会話は弾みません 「おお、そうじゃ。お主の世界の人間がおったかもしれん」 会話を弾ませようとオスマン氏がとても重要なことをさらっと言いました 「そうですか・・・って、ええ?!」 さらっと言われたもので聞き逃しそうになりましたがそんな重要なことは聞き逃せません 「どこだかは知らんが「元の世界に帰りたい」と言ってた者がおったんじゃよ。おそらくお主と同じ世界だとは思うのじゃが」 「その人は今どこに?」 「死んだよ・・・。わしを助けた時には酷いケガでの、死ぬ間際まで元の世界に帰りたいとうわごとのように繰り返しておった・・・」 「助けた?」 「・・・ちいっとばかし爺の昔話に付き合ってくれるか?」 「もう30年も前の話なのかのう・・・ ある日わしは森にとある秘薬の材料を探しに行っていたんじゃよ しかし途中ワイバーンに襲われたんじゃ 死にそうだったところにその者が一撃でワイバーンを粉砕して助かったんじゃが」 「・・・・・・・」 「そのときにワイバーンを倒した一撃の反動が決定打になったのかその後は先に言ったとおりじゃ」 「すいません。いやな思い出を話させてしまって」 「なに言っとるんじゃ。爺に遠慮は不必要じゃよ」 そう言ってオスマンは紅茶を手に取った。話の最中にミス・ロングビルがおいてくれたものだ ドッピオも紅茶を口につけて話の一区切りを入れていた 「いただきます」 紅茶に口を付け一口飲むとドッピオは考えを巡らせ質問します 「なにか遺品とか残ってないんですか?」 「うむ、「破壊の杖」と言う彼の所持品だったものがある…」 ガシャン・・・ 破壊音はミス・ロングビルのポットを落とした音でした 「し、失礼しました。すぐに掃除を」 動揺しているのかその動きには落ち着きが無かった 「彼がわしを助ける時に使った魔法の杖らしきものなんじゃが・・・ 余りの破壊力の為この学院長室の下にある宝物庫にしまってあるのじゃよ」 「見れませんか?」 「鍵なくしちゃって・・・ゴメンネ!!」 手を合わせ片目を瞑る500歳にカップを投げたくなる衝動を押さえるドッピオでした 「魔法で何とかならないんですか?」 「スクエアクラスのメイジ数人は欲しいからのぉ・・・だがもしかしたら・・・」 「何か名案があるんですか?」 「壁をぶち抜けばいけるかも?」 「やっていいならやりますけど・・・」 キング・クリムゾンのパワーなら可能と考えたドッピオの考えは 「絶対ダメ!!」 両腕でバッテンを作った爺にさえぎられてしまうのでした 「なら、言わないでくださいよ。でもまあ、魔法が使える杖なんか僕の世界には存在しないから関係ないですね」 そう言いドッピオは紅茶を飲み干します。出された以上余す訳にはいきません 「お世話になりました。また来る時は有力な情報をお願いします」 「まぁそう焦るな若いの。また来い」 「仲が宜しいのですね」 ニッコリ微笑みながらオスマンに紅茶のお代わりを注ぐロングビル 「ほっほっ、なかなかおもしろいやつでのぉ。あいつと話していると若い頃を思い出すわい」 長い髭を触りながら楽しそうに話すオスマン 「それは良いことですね、オールド・オスマン。しかし人のお尻を触りながら言っても格好良さは三十分の一ですよ」 「痛て!!」 秘書にセクハラを軽くあしらわれているオスマンには学院長としての威厳もクソもありませんでした 9へ
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それから数時間後。大人しく空賊に捕らえられたジョセフ達は、空賊船の船倉に閉じ込められていた。 ジョセフ達をここまで運んできた船、『マリー・ガラント号』の乗組員達は自分達のものだった船の曳航を手伝わされているようだ。 ジョセフはデルフリンガーを取り上げられ、メイジ達は杖を取り上げられた。後は鍵を掛けてしまえば何も出来ない、という認識はおおよそ間違ってはいない。 だがジョセフは特に何か行動を起こすでもなく、酒樽や穀物袋や火薬樽が雑然と置かれた船倉で静かに寝転がっていた。 「どうするんだジョジョ! 空賊なんかに捕われてしまったんだよ、どうにかしないと!」 空賊に発見されてからこの方、徹頭徹尾徹底抗戦を唱えているギーシュが、船倉の中で唯一この状況を打開できそうなジョセフに詰め寄った。 だがジョセフは起き上がる素振りさえ見せず、寝転がったままギーシュを見やった。 「ここで暴れてもどーもならんじゃろ。まだわし一人だけが捕まったんならどーとなりとでも出来るが、お前達まで人質になっとったら正直どうもできんぞ。幾ら何でも五人も守りながら戦うだなんて器用なマネはわしにはできん」 杖を取り上げられたメイジが五人雁首を揃えたところで、足手まといにしかならないのはここにいる全員が理解していることである。 更に言えばジョセフの傷は包帯の下で波紋を流しているとは言え、まだ治療中である。今の傷の具合では戦いに必要なだけの波紋を練るのもやや厳しい。 そうなればジョセフは傷を癒す時間を得る為、黙って寝転がっているという次第だ。 (ッつーか今回はハイジャックとはなァー。つくづくそーゆー星の下に生まれとるんじゃよなァわしは) ほとんど他人事のように心の中で呟いたジョセフは、他の面々の様子を伺ってみた。 一番落ち着きが無いのはギーシュだ。 船倉の中で何か使えるものはないかと探した結果、火薬樽を見つけて何やら奇跡の逆転劇の台本を書いているようだが、あんなものをこんな場所で使えばどうなるか、については考えが至っていないようだ。後で鉄拳制裁混じりの説教をすることにした。 ギーシュの次に落ち着きが無いランキングに入賞したのはルイズだった。 こちらは大人しく自分の横にぺったり座ってはいるが、視線が落ち着き無く彷徨い続けている。 それに加えて暇を見つけては傷は大丈夫か痛くは無いか、と心配そうに尋ねてくる事も忘れない。 その度に大丈夫だこんな可愛いご主人様に心配してもらえて光栄だ、と笑って答えればルイズは顔を赤らめながら「そ、それならいいのよ」と顔を背けてしばらく黙る。 あんまり同じ受け答えだと向こうもそれに気付くので、頭を撫でたりちょっと腕を上げて力こぶを作って見せたりのバリエーションをつけることも忘れない。 第三位に入るのはワルド。ギーシュと同じく船倉の荷物を興味深く検分してはいるがギーシュとは違い、脱出目的のために見ている訳ではないようだ。 空賊の荷物はどんなものか、を見ている程度のものだろう。 第三位と甲乙つけがたいが、第四位はキュルケだった。彼女は生来の肝の太さを遺憾なく発揮し、看守の男を色仕掛けで虜にしようとしていた。 だが意外と看守の男は身持ちが固いらしく、キュルケの悩殺を楽しみはするもののそれに乗る様子はない。 そしてぶっちぎりの第五位は言わずと知れたタバサである。 空賊に発見される前から今に至るまで、取った行動と言えば『読書』一択。 ページを捲らずに読んでいるフリをしているとか、本が逆さまだということなど断じて無く、普通に本を読み続けている。 (それにしてもあのお嬢ちゃんはただモンじゃねェよなァ) ジョセフは内心で感心しつつ、包帯の上から腕を撫でて傷の具合を確認する。 まだ痛みはするが、死ぬほど痛いというわけではない。もう少し時間を掛ければ完治もするだろう。また呼吸を整え、波紋を練り込んでいると扉が開いた。 太った男がスープの入った大きな鍋と水差しの乗ったトレイを持ってやってきたのだ。 「メシだ」 扉の近くにいたジョセフが受け取ろうとするのを、男はトレイを持ち上げて阻止した。 「おっと、質問に答えてからだ」 その言葉にルイズが立ち上がった。 「言って御覧なさい」 「お前達、アルビオンに何の用だ?」 「旅行よ」 ルイズは腰に手を当てて、毅然と言い放った。 「トリステイン貴族が今時のアルビオンに旅行だって? 一体何を見物するつもりだい」 「さあね。考えてみたら?」 「随分と強気だな。トリステインの貴族は口ばかり達者なこった」 空賊の男は苦笑いすると、トレイをジョセフに渡す。それを船倉の中央に置くと、腹をすかせた全員がわらわらと寄ってきた。 「なんだいこれは、こんな粗末なものを食わせようと言うのか!」 具も殆ど浮いていないスープを前に、憤懣やるかたない様子のギーシュだが他の面々は黙ってスプーンを手に取っていた。 「文句があろうがなかろうが食っとけ。腹が減ってヘバっとったらマヌケもいいとこじゃ」 そう言ってジョセフが最初にスープを飲み、口の中で転がしてから飲み込んだ。 「お、けっこう旨いぞ。ヘンなモンは入っとらんようじゃ」 その言葉に全員がそれぞれスープを飲むが、すぐに飲み終わってしまうと再びやることが無くなった。 また時間を持て余そうとした時に、ジョセフが不意に口を開いた。 「なあ。こんなにヒマなんじゃしちょいと賭けでもせんか」 壁に凭れ掛かって脚を組みながら、泰然とした態度で船倉を見渡す。 使い魔の言葉に眉を顰めるのはルイズだった。 「ちょっとジョセフ、こんな時に何を言ってるのよ」 だがジョセフは主人の言葉を意にも介さず、船倉にいる全員に向けて言葉を続ける。 「なあに、とても簡単な賭けじゃよ。誰が乗る?」 ニヤリと笑うジョセフの言葉に、悠然と立ち上がるギーシュ。 「いいだろう、だがどういう賭けかを聞いてから乗るか反るかを決めてもいいんだろう?」 「ああ構わん。他に乗るヤツぁおらんか?」 ワルドは興味深そうに見ているだけで立ち上がらないし、タバサは我関せずと読書を続行している。 そしてルイズは頬を膨らませながら腕を組んで、『こんな時になんて不謹慎な』という態度を崩していない。 残った一人であるキュルケは、そんな一行の様子を見てやれやれと立ち上がった。 彼女としてはこういうイベントがあれば参加したいというのもあるが、ジョセフの持ちかけた賭けに興味をそそられたのが最大の理由であった。 「じゃあ私もその賭けに参加させてもらおうかしら」 「グッド!」 ジョセフがニヤリと笑って親指を立てる。 「で、賭けの対象はなに? それを聞かせてもらわないと話が始まらないわ」 早速すすすとジョセフに近付いたキュルケは、ジョセフの前に座り込んで聞いた。ギーシュも貴族然とした優雅な足取りでジョセフに歩み寄った。 他の面々はそれでも興味を引かれて聞き耳を立てることとなった。 「んじゃ賭けを発表するぞ。賭けの対象は『この船の主が空賊か否か』じゃ!」 船倉の中で呆気に取られなかったのは、ジョセフとタバサ、そしてワルドくらいのものだった。 しばらく妙な雰囲気の沈黙が漂ったが、それを打ち破ったのはギーシュだった。 「は……はははははは! なんだいジョジョ、何やら随分と落ち着いてると思ったら何の事は無い、一番混乱しているのは君じゃないか! いきなり何を言い出すかと思ったが、正直僕は君の正気を疑ってしまってるよ!?」 いかにも最高の道化師を見たかのような破顔の笑みでジョセフを指差して笑うギーシュ。 聞き耳を立てていたルイズも、あちゃあ、と言わんばかりに顔に手を当てて眉間に深く皺を寄せていた。 「で、ダーリンはどっちに賭けるの?」 しかしキュルケはチェシャ猫のように笑いながら、さも愉快げに問いかけた。 ジョセフは余裕めいた笑みを全く崩さず、二人の貴族に下向けの掌を緩やかに見せた。 「わしが賭けるのは、お前達の後でいい。お前達の反対に必ず賭けよう。空賊だと賭けたらそうでない方に、そうでない方なら空賊だと言う方に賭けよう」 「そんな賭けでいいのかい? じゃあ僕は当然、空賊だ、という方に賭けるよ。賭け金はどこまで賭けたらいいんだい?」 勝ちを確信、どころか勝利を疑うこともせず、ギーシュは嬉々として上限を聞いた。 「幾らでも青天井で構わん。わしはそれに見合った代償を賭ける」 「そうか! じゃあそうだな……では僕は、100……いや、200エキューを賭ける!」 120エキューで平民一人が一年間暮らせるだけの金額だというのに、それを易々と超える金額を提示するギーシュ。 「ほう太っ腹じゃな。負けたらきちんと払ってもらうぞ」 「なあに、こんな勝ちを譲ってもらえる勝負ならこれくらいのコトはしないとね!」 「ちょっとギーシュ! いくらなんでもジョセフに200エキューなんて手持ちがあるわけないでしょ!?」 ルイズが慌てて二人の間に駆け寄るが、ギーシュは芝居がかった動作でルイズに指を突きつけた。 「おっとミス・ヴァリエール。使い魔の言葉は主人の言葉だということでもある。もしジョジョが賭け金を払えないというのなら、君に払ってもらってもいい……が、それではつまらない。だから僕は、君ではなくジョジョから全てを取り立てることにしたッ!」 ゴゴゴゴゴ、と何やら特徴的な書き文字がバックに出ているようなポーズと顔でジョセフに視線を向ける! 「この200エキューの代償として、ジョジョ! 君に一年間、僕の執事をやってもらおうッッッ!!」 ドォーーーーz_____ン どこからか特徴的な効果音さえ聞こえそうな勢いで言い放ったッッッ!! ジョセフは無論、口端をこれ見よがしに大きく吊り上げて叫び返すッッッ!!! 「グッドッ! いいじゃろう、その賭け乗ったッ!!」 バァーーーーz_____ン 二人とも不敵な笑みを浮かべて視線をぶつけ合えば、ドドドドド、と音が聞こえそうなすさまじい緊迫感が二人の間に流れた。 ルイズは懸命に叫びたててこの賭けは無効だ主人が同意してないから成立しない、と言っているが、この二人は聞き入れる気配など微塵も無い。 やがて愉快げな笑みのまま、ジョセフはキュルケに視線を向けた。 「で、キュルケ。お前はどっちに賭けるんじゃ?」 問われたキュルケは、赤い唇を褐色の指先で色っぽく撫でて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。 「あたしは、ダーリンの賭けた方に乗るわ」 「ミス・ツェルプストー! 君まで僕に200エキューをただで渡すというのかい!?」 笑いが止まらないとは正にこの事だろうと言う満面の笑みで、ギーシュはキュルケを見やった。 「いいわ、なんなら私もミスタ・グラモンの召使をやってもよくってよ?」 自慢の赤毛を両手でかき上げれば、ふわりと立ち上る女性の色香。 「あ、それはモンモランシーが誤解するから本気でやめて」 「誤解させるつもりだったんだけど」 素で返されたのでキュルケも素で返す。 「じゃ、私も200エキューをベットするわ。それでいいわね」 つまんないわね、と唇をちょっと尖らせてから、ジョセフににまりと笑みを向けた。 「よし! ではわしは『この船の主は空賊ではない』に賭けるッ!」 この時点で賭けは成立した。 「んもう! 本当にどうして私の使い魔は主人の言う事を聞かないのかしら……!」 大きく天を仰いで嘆息しつつ、力が抜けたようにルイズは壁際に寄りかかった。 その時、再びドアが勢い良く開き、随分と痩せぎすの男が入ってきた。空賊はじろりと一行を見渡すと、ニヤニヤと笑みを浮かべながら言った。 「おめえらは、もしかするとアルビオンの貴族派かい?」 敵意を持った沈黙と、この場にはそぐわない余裕めいた沈黙が空賊に答えた。 「おいおい、黙ってちゃ判らないだろうよ。でもそうだったら失礼したな。俺達は貴族派の皆さんのおかげで商売させてもらってるんだ。王党派に味方しようとする酔狂な連中を捕まえたら、それもまた商売になるって寸法だ」 「じゃあ、この船はやっぱり反乱軍の戦艦なのね」 ほら見ろ、と言わんばかりにギーシュがジョセフに笑って見せた。 「いやいや、俺達は別に雇われてるワケじゃねえ。あくまで対等に協力しあってるだけだ。ま、お前らにゃ関係のないことだがな。で、どうなんだ? 貴族派か? それならちゃーんと港に送ってやるよ」 ねめつけるような空賊の視線に、ルイズはあからさまな怒りの視線をぶつけながら立ち上がった。 「誰が薄汚いアルビオンの反乱軍なものですか! 寝言は寝てから言ってほしいものだわ! 私は誇り高きアルビオン王党派への使いよ、まだあんた達が勝ったわけじゃないんだからアルビオンは王国だし、正当なる政府はアルビオン王室よ!」 凛とした態度を崩さずに、怯えも恐怖も見せずに言ってのける。 「私はトリステインを代表してそこに向かう貴族なのだから、つまりは大使だということよ! だから大使としての扱いをあんた達に要求するわッ!」 ギーシュは今にも顎が外れそうなほど口を大きく開けて、叫んだ。 「きっ……君は大バカか、ミス・ヴァリエールッ!?」 「誰がバカよ! 命惜しさに誇りを捨てて空賊風情に媚を売るだなんてマネを易々とするほうがよっぽどバカだわ!」 ギーシュに向き直ったルイズは、躊躇うことなく怒鳴った。 「それはそうだが、時と場合を選んでくれないか! 君がどういう行動をしようが勝手だがね、それに僕たちまで巻き込むのはやめてくれ!」 「うるさいわね! ならアンタは貴族派ってことにすればいいじゃない!」 「何を言うかミス・ヴァリエール! このグラモン元帥の四男たる僕に、アンリエッタ王女の信を裏切る真似をしろとでも!?」 ムキになって言い返すギーシュを見たキュルケは、呆れた顔で二人を見た。 「これだからトリステインの貴族は……。どうしてこんなに口だけ達者なの?」 頭痛を感じ始めた額に手をやって、やれやれと首を振った。 そんな様子を見ていた空賊はやがてさも楽しげに笑った。 「正直なのは美徳だろうが、お前達ただじゃすまねえぞ」 「あんた達なんかに嘘ついて頭下げるくらいなら、死んだほうがマシよ!」 断言するルイズに、ジョセフが立ち上がると主人に近付いていった。 何をする気か、と空賊も含め、船倉にいる全員の視線を集めたジョセフは、ルイズの横に近付くと、不意に帽子を脱いでルイズの頭に被せ、その上から力強く撫で回した。 「よく言ったッ! よく言ってのけたルイズッ!」 「え、あ!?」 突然のことに真っ赤になりながら、されるがままに頭を撫でられるルイズ。 「そうでなくっちゃな、それだからわしの可愛いご主人様なんじゃよなッ! いいぞルイズ、流石わしのご主人様じゃッ!」 かか、と満面の笑顔のジョセフはそれだけに留まらず、膝を折ってルイズと視線を同じ高さにすると、頭を撫でる手で主人の顔を引き寄せ、頬ずりまでして見せた。 ついに気が狂ったか、と考える者もいたし、はいはいバカ主従バカ主従、と呆れを隠さない者もいた。 「……頭に報告してくる。その間に遺書の文面でも考えてな」 余りの展開に気圧された空賊は去っていった。 「……ところでミス・ヴァリエール。僕達はもう破滅だと思うんだが」 大きく溜息をついて肩を落とすギーシュに、ルイズは毅然と言葉を掛けた。 「最後の最後まで私は諦めないわ。地面に叩きつけられる瞬間まで、ロープが伸びると信じるわ。――それに、私にはジョセフがいるんだもの」 帽子を被せられたまま、躊躇わずに断言したルイズの頭が再び大きな掌で撫でられた。 「あのねえ……ジョジョの手は君がとっくにリザーブしてるじゃないか。僕達はどうしろって言うんだい。せめて嘘くらいついてもバチは当たらないだろう」 もはや死を覚悟し始めたギーシュに、それでもルイズはきっぱり言い切った。 「それとこれは話が別よ! 嘘なんてつけるもんですか、あんな連中に!」 はああ、と大きく溜息を吐いたギーシュは、もはや問答は無駄だと判断して次の言葉を接ぐ事を諦めた。 ワルドもルイズに近付こうとしたが、ジョセフの凄まじい気迫(ワルド以外には欠片も感じさせなかった)に気圧されて近付くことができなかった。 やがて程無くして扉が開いた。先程の痩せぎすの男だった。 「頭がお呼びだ」 To Be Contined →